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 外観 1

初級〜中級 住宅写真の撮り方 



設計士から細かい指示を受けることもあるが、「まっ、いいように撮って」と言われることのほうが多い。で、いいように撮るのだが、いつもいつも不安になる。どういう写真を求めているのか、ちっともわからないからだ。で、結局いろいろ撮る。たくさん撮る。下手な鉄砲も‥というやつだ。
とはいっても、でたらめに撮るわけではない。建物を見て、まず
仕上がりをいろいろイメージする。すると、いくつかの絵が頭に浮かぶ。いつどこでどう撮るかは、自ずと解けるものだ。

上の写真は、雑誌に掲載したN邸。できたばかりで、外構はなにもなし。植栽もなし。変化の少ない、さいころのような外観。個性的な建物だが、なぜかあまり目立たない。小さいためだろうか。
さて、どう撮ろう。外壁の質感をどう出すかが、N邸外観のポイント。やはり光の反射と陰影だろう。このN邸では、20カットほどの外観を撮った。
右上の写真は、N邸の北東面。色的にはむずかしいアングルだが、この写真を見てどう思うだろうか?インパクトがなくて、つまらないよね。こういうカットの場合、イメージ的には、たとえばランドセル姿の小学生2人か3人を画面に入れたい。。立ち止まって建物を見上げていてもいい。
人入り写真向きのカットだ。

イメージがどうこうと偉そうに書いたが、別にイメージを膨らませて創造しているわけではない。ざっくばらんな話をすれば、過去に撮った写真や過去に見た写真を思い出してあてはめているだけ。ひとつの建物を撮る基本的バリエーションは、実はそんなに多くないのだ。



伊那市高遠町の民家調の別荘。
南斜面にあり、遠くに中央アルプスの山並が望める。こういう場所はいろんなアングルでどうでも撮れるんで、逆に困ってしまう。ベランダからのカットを入れると、全部で20カットは撮ったろうか。住宅密集地なら、撮るアングルは限られてしまうんだけどね。

誌用の写真なんで、こちらとしては、左の写真を大きく使ってもらいものだが‥。「林さん、建物を小さくして、もう少し景色を入れてよ!」と、編集者からクレームがつきそう。そうなんだよね。実は60点のカットなのだ。でも、選ぶとしたら、これだ。
左の写真の右下には、隣家の屋根がちょこっと写っている。撮るとき、隣家の屋根を嫌ったのだ。後で思うことだが、入れてもよかったのに。仮に嫌うにしても、構図(バランス)を考えて、ズームリングをもう少し広角側に回せばよかった。残念。
自宅PCのモニターを見ながら、いつもいつも反省。どうしてうまく撮れないんだろう。同じようなミスを何回も何回も繰り返している。



Aの写真は薄曇りで撮ったもの。暗い曇りではないので、まあまあに撮れている。Bの写真は晴れの日に撮ったもの。晴れといっても、薄い薄い雲がかかっていたので、80パーセントくらいの晴れかな。この2枚、かなり違った印象を受ける。どちらがいいかと言われれば、やはりBの晴れの写真かな。一般的に、晴れの写真はメリハリがあって立体的だし、発色もいい。それに青空とか白い雲も感じ良く写る。一方曇りのときの写真は、コントラストが低くて眠い感じになるし、発色もイマイチ。空も同様だ。
洋風住宅は、なんてったって晴れていたほうがい。特に白い建物などは、降り注ぐ光と青空で撮りたいところ。形のいい白い雲があれば、なおいい。背景の空がグレーでは、もうどうしようもない。
和風住宅もやはり晴れた青空で撮りたいところだが、写真Cのように軒下が黒くつぶれてしまうことがある。とくに4月から8月までの日の高いときは、どうしても高コントラストになる。とくに小さいカットで使う場合などは、白飛び・黒つぶれがあってもやはりCのほうが力強い。やはりケースバイケースか。
ボジフィルムは極端にラチチュードが狭かったが、デジタルは違うぞ。トーンカーブなんかでコントラストを調節できるからだ。さらに白飛び・黒つぶれを軽減する機能、たとえばアクティブD-ライティング(ニコン)とかHDRなんかがついているので、どピーカンでもちっとも怖くない。はははは。
写真Dは、Cとほぼ同じ時刻の薄曇り撮ったもの。印刷に回すならやはりDだろうか、WEB上で使うならりメリハリに欠ける。メリハリのない写真は、インパクトに欠ける。いい写真なら、どこかが飛んでいても、どこかがつぶれていても許せるのだろう。

外観撮影は、5月から7月は日が高くて撮りにくい。逆に、11月から2月は日が低くて撮りにくい。建物にもよるんだろうが、やはり9月から10月にかけてが撮りやすいと思う。日の高さが適度で、陰影のバランスがいい。庭木も緑だ。
家の中の撮影も一概にはいえないが、4月から8月の間が撮りやすい。日中、家の中に光が差し込まないからだ。つまり天候に関係なく撮れるということ。でもだ。本当にいい写真は、室内に日が差し込んだ写真だと思う。どうも言ってることがメチャクチャだね。



なん時ころの撮影がよいのか?よくそう聞かれるが、それこそ建物を見なければわからない。
どの方向から撮影するかによっても違う。ただ言えるのは、
適度な陰影をつけるということ。 たとえば建物の東南側を撮る場合、メインではない面が1絞りとか2絞り分暗いときが、ベストの撮影時間。
上の写真は、快晴のときに撮った東南側外観。Aは、東面と南面に同じくらいの光が当たっている。陰影がなく、立体感に欠ける。Bは、もう少し遅い時間に撮ったもの。東面がやや暗く、立体的な印象を受ける。もちろんBの写真のほうがいいと思う。ところが、この2枚の写真を並べて、「どちらがいい?」と聞くと、答えは分かれる。おもしろい。

さて、正面で撮る場合。
自分の真後ろに太陽がある時間帯を避ける。たとえば南側真っ正面を撮る場合は、12時に撮らないということ。下に影ができても右または左に影ができず、建物を立体的に見せないからだ。
12月から1月、太陽を背にして真っ正面で撮ると、光が建物に反射するので要注意。これは、斜でもいえること。

曇っているときも同じように撮るが、そんなに神経質になることない。コントラストが低いからだ。また、曇っているときは、逆光での撮影も比較的容易。容易だからといって、うまく撮れるとは限らないが‥。

日の低い秋から冬にかけての
逆光での撮影は、タイミングがなかなかむずかしい。たとえば、建物西北面を撮るとしよう。午前10時とかに撮ろうすれば、モロ逆光。場合によっては、画面に太陽が写る。そして午後2時とかに撮ると、西面は真っ白で北面は真っ黒という写真になってしまう。じゃどうするかというと、西面に光があたるか当たらないかという時間に撮るのだ。
冬至前後の逆光は絶望的だが、日の高い夏の間の
逆光撮影はラクチン。画面に太陽が入ることはまずないからだ。



上の写真は、ほとんど同じ時刻(午前10時半)に撮ったもの。Aが西南面。そして、Bが東南面。Bは東面も南面も同じ強さの光が当たっているため、立体感に乏しい。一方、Aは西面が暗くて立体的。光線的陰影的には、Aの写真のほうがいい。とはいっても、これは西面の面積が比較的小さいからで、西面が大きな場合はもう少し遅い時間に撮るべきだろう。
これは一般論。建物が南に向いている場合は、やはり西南より東南側を重視する。西面には窓が少なく、変化もなく、閉鎖的だからだ。これは、西日より朝日を重視するためのもの。とはいっても、西側道路の場合は、それなりに設計するので、撮影ではやはり西南側を重視する。また、玄関の位置よっても、大きく変ってくる。言ってることが、めちゃくちゃかな。



写真は北西面。北面というのは、夏の間は比較的撮りやすい。太陽が高いからだ。撮影したのは8月中旬。Aは薄曇りの12時15分に撮ったカットで、まあまあ出来。Bは薄曇りの2時頃撮ったカットで、メリハリがあってAよりいいと思う。

よく晴れた日の場合は、西面に強い光が当たる前に撮る。これは夏も冬も同じ。でも、薄曇りなら、いつでも撮れそう。困るのが、日の低い冬だ。午前中だと、モロ逆光。冬至近くなら画面に太陽が入り込んで、絶望的だ。曇っていれば午後なら撮れるが、晴れていれば12時ちょい過ぎあたりかな。この辺の話は、説明がやっかいだ。

この住宅の駐車スペースは、コンクリート。これがやっかいだ。特に晴れた日に撮ると、コンクリートは必ず白飛びする。水で濡らすという手もあるが、なかなかむずかしい。

夏至近くなら、北面にも日が当たる。夕方の5時頃とか早朝の6時頃撮るという手もある。なんとなく不自然だが、狙ってみたいカットだ。



人の目の高さにカメラを据えるのが、建築写真の基本。恒常視点というやつ。つまり、外観を撮るカメラの高さは、人が立った目の高さ。和室では、正座した目の高さ。ダイニングでは、椅子に座った目の高さということ。基本は簡単だ。
とはいっても、写真屋としてはそれだけでは物足りない。「なにか違った撮り方があるのでは」といつも考えてしまう。

Bは車のルーフキャリアに1.5mの脚立を立て、その上から撮ったもの。AとBは、意図がまったく違う写真で、どちらがいいかということはない。
Dは、物置の2階から撮ったもの。同じ建物でもずいぶん印象が違う。一般的に、洋風住宅のハイアングルは違和感がない。



カメラから建物の距離もむずかしい。どこまで下がって撮るかによって、建物が違った形に写るからだ。建物に近づいて撮影する場合は超広角レンズを使うことになり、パースペクティブ(遠近感)が強調される。離れて撮影する場合は、パースペクティブが弱くなる。障害物がなくて引きがある場合は、どこからでも撮れるので、逆に困ってしまうことも。結局こっちで撮ってあっちで撮ってと、とにかくたくさん撮ることになる。ここぞという場所を見極め、エイッと気合いを入れてシャッターを押すカメラマンもいると思うが、おれはそれができない。4×5(しのご)ならいざ知らず、首から下げたカメラでカシャカシャと撮るからだ。
どこまで下がるかというと、
建物がいちばんきれいに見える位置までだが、これがなかなかむずかしい。ひとつの目安は、屋根かな。建物に近過ぎると、屋根面が写らない。壁だけの写真はどうも寂しい。屋根勾配の問題もあるが、とりあえず屋根や棟の見える位置まで下がって見よう。やはり屋根は大事だ。引きがな場合は、脚立などの上から撮るのも一案。洋風住宅ではよくハイアングルでも撮影するが、和風住宅ではあまりしない。ハイアングルだと、軒などのディテールが写らないためだ。

上の写真AとBは、撮影位置がずいぶん違う。レンズも当然違う。Aは13mm、Bは60mmという焦点距離。AとBは極端に違うが、そのどちらがいいのか。その答えはよくわからない。ひとそれぞれの好みもある
し、写真の用途もあるからだ。

フィッシュアイという言葉をご存知か。魚眼レンズのことだが、写真用語にはもうひとつの意味(半分冗談)がある。池や川にジャブジャブと入って行き、人が普通行かないところ行けないところから撮影すること。バードアイもしかり。屋根の上や電柱の上から撮影してみる。その建物をよく知っている人でも、初めて見るアングルは新鮮に違いない。でも、奇をてらったり、意表をつくようなカットは、あくまでもオマケ。



外観を撮るとき、室内のカーテンやブラインドをどういう状態にしておくか。たいした問題ではないが、ときどき迷うことがある。
カーテン・ブラインド類は、明るい色が多い。閉めた場合、外からだと白っぽく見える。開けた場合は、逆に黒っぽく見える。外壁が明るい色の場合は、メリハリという点でカーテン・ブラインド類は積極的に開けている。
また、カーテン類を閉めてしまうと、閉鎖的というのはオーバーだが、留守の家のようでなんとなく寂しい。そういう面からも、やはり開けたほうがいい。が、開けると家の中が写ることがある。写ってほしい場合もあるが、まずい場合もある。いろいろでむずかしい。
困るのが、障子。閉めると寂しいし、開けると中途半端。障子は、迷ったら閉めることにしている。

網戸は、同じ方向に寄せる。両開きの場合は、左右に振り分ける。ときどき外すこともある。